【6/15番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜

「うあっ……はぁっ」

 突如、隣で眠る彼が呻きを漏らした。
 恐る恐るその寝顔を見てみれば、彫刻のように整った顔がなぜか歪み、額には脂汗が浮かんでいる。

 額に張り付く薄茶色の髪を掻き分けてやると、彼が私の手をギュッと握りしめてきた。

 ――えっ!?

 ギョッとしたのも束の間、今度は彼が私の腰に腕を回してしがみついてくる。

「母さん……」

 ――母さん?

 もしかしてこの人はマザコンなのだろうか。
 見ればその目尻に薄っすら涙が光っている。

 ――怖い夢でも見ているのかな。

 弟たちが幼い頃にも、夜中に悪夢でうなされて泣くことがあった。
 そんな時、彼らは私の布団に潜り込み、両側からきつく抱きついてきたものだ。

 そっと指先を近づけて、彼の目尻の(しずく)を拭う。
 すると彼の腕に力が篭った。

「行かないで……」

 小さな呟きに、なんだか胸が締め付けられる。切なげな姿に母性本能がくすぐられるというか……。

「大丈夫、大丈夫よ」

 身を乗り出すと彼を抱きしめるようにして、広い背中をトントンと叩く。

「ねんねこ、ねんねこ〜」

 その昔、幼い弟たちに何度も歌って聴かせた子守唄を口ずさみつつ、リズムに合わせて背中を軽く叩き続けた。

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