【6/15番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜
それでもあの頃の俺は決して不幸なわけではなかったと思う。
裕福だとは言えないが、祖母の貯金と母の稼いだお金のおかげで生活に困ることはなかったし、クリスマスの朝には希望していたライダーベルトが枕元に置かれていた。
小学校では友達がいたし、この母親譲りの恵まれた容貌のおかげでそこそこ人気もあったほうだ。
母も忙しいなりに時間があれば俺の相手をしてくれていた。
家事が苦手な人で家のことはほとんど祖母に任せていたのだが、日曜日の昼などに気が向くとパンケーキを焼いてくれるのだ。
『これは私の唯一の得意料理。ニューヨークにいたときはしょっちゅう焼いてたの』
市販のパンケーキミックスを混ぜて焼くだけの簡単な料理を、しかも裏が焦げているのに自慢げに出してくる。
そして俺が食べている姿を、頬杖をつきながらニコニコと眺めているのだ。