【6/15番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜
あれは多分、俺への精一杯の誕生日祝いだったのだろう。
甘い卵焼きとパンケーキという奇妙な組み合わせだったけれど、俺にとっては最高のご馳走だった。
『母さんのパンケーキ、美味しいよ。また作ってね』
シロップがたっぷりかかったパンケーキを頬張っている俺を、母はいつものように頬杖つきながら眺めている。
『ママが作るパンケーキ、あなたのパパの大好物だったのよ』
『そうだったんだ……』
そこで俺は勇気を出して聞いてみた。
『……母さんは俺の父親のことを愛してたの?』
『もちろん、愛していたわ、誰よりも』
即答した母は、『けれど今は臣海が一番だけどね』とふわりと笑った。
とてもとても幸せそうな、世界一美しい笑顔だと思った。
そしてその後、母は坂を転げ落ちるように衰弱していき、パンケーキも卵焼きも、そしてドロドロのお粥さえも口にできなくなってしまったのだった。