【6/15番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜

「久遠さん!」

 席を立ち、ドアノブに手をかけた久遠さんを私は思わず呼び止めていた。

「一つお聞きしてもいいですか?」
「なんだい?」

「臣海さんの名前を聞いたとき……どう思いましたか?」

 すると彼はドアノブから手を離し、臣海さんを真っすぐ見つめながら口を開く。

「……息子の名に自分の名前の漢字を使われて喜ばない親などいないだろう? それに……」

 一瞬言い淀んでから、遠くの空を見るかのように、窓のほうに目を向けた。

「海冬は……彼女はいつも、私のことをオミって呼んでいたんだ」

 そう懐かしそうに告げる久遠さんの瞳が、気のせいか潤んでいるように見えた。

 同時に臣海さんの顔がグニャリと歪む。
 片手で目を覆うと、テーブルに片(ひじ)をつき、うつむいた。

 久遠さんはそれを見届けると、黙って部屋を出て行った。

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