【6/15番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜
「臣海さん、愛されてるね」
震える彼の背に手を添えてそっとさすっていると、しばらくしてから臣海さんが顔を上げる。
私が手渡したティッシュで目尻をぬぐいながら呟いた。
「……俺がはじめて父親と交わした言葉を思い出した」
「え?」
「葬式のあとであの人が話しかけてきたんだ」
久遠さんは、涙を必死に堪えていた11歳の臣海さんの前で腰をかがめ、『君が臣海君かい?』と聞いたのだそうだ。
『君の名前をフルネームで言ってみてくれないか?』
『……白石臣海』
『どういう字を書くんだい?』
『総理大臣の臣に、海』
臣海さんがそう答えると、久遠さんは『そうか、君の名前は白石……臣海君か。とてもいい名前だ、本当に』と頬を震わせ、最後に『私が君の父親だ』と告げて片手で目を覆ったのだという。
「あの人が泣くのを見たのは、後にも先にもそれ一度きりだな……」
「そうだったんだ」
「あの人と親子らしい会話なんてしたことが無かったし、温かい言葉ももらったことなんて無いと思っていたけれど……あの時たしかにあの人は感情を見せてくれていたんだ」
そう呟く臣海さんの瞳が揺れている。