【6/15番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜
タクシーを待つあいだに両家の親にも電話を入れる。
千春さんがクリニックに向かおうかと言ってくれたがそれは遠慮した。
検診時にナースやドクターからは、赤ちゃんが生まれるまでは母親以外は励ますくらいしかできないと言われていたからだ。
「痛〜い! 痛い!」
菜月はタクシーの中でもかなり辛そうだったが、クリニック到着時にはもっと酷くなっていた。
「お父さんが励ましてあげてくださいね」
ナースや助産師さんが入れ替わり立ち替わり様子を見にくるが、まだまだ時間がかかるらしい。
俺ができることなんてストローで水を飲ませたり額の汗を拭いたりするくらいだ。
「菜月、つらいな。変わってあげられなくてすまない」
「ふふっ、変わるって……。臣海さんが妊娠したら……なんでも似合うからマタニティドレスでもカッコいいかもね」
「それで菜月の苦しみが軽くなるのならマタニティドレスでもなんでも着てやるのに……くそっ!」
「臣海さんが女装って、ハハッ……痛たたた……っ」
そんなふうに最初は陣痛の合間に冗談を言っていた菜月も徐々にその余裕が失われていく。