【6/15番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜

「菜月、俺を人の親にしてくれてありがとう。美月の父親にしてくれてありがとう……」

「うん、臣海さん、抱いてあげて」

 目の前の命はとても小さくて儚げだ。けれど恐々(こわごわ)腕に抱いたその途端泣きだして、その声の力強さに驚いた。

 怖くて嬉しくて感動で、全身の細胞が粟立(あわだ)った。

「凄いな……必死に泣いて必死に生きてるんだ。菜月の身体から出た途端、この子は1人の人間になったんだ」

 泣き止まない美月を菜月にかえす。
 助産師さんに言われた菜月が乳房を寄せると、生まれたばかりのその子が小さな口を開いて吸い付いていく。

 その姿が一枚の宗教画のように見えた。

 ――綺麗だな……。

 窓から差し込む日差しに照らされて、汗でしっとりした横顔と濡れ髪が輝いている。
 額を流れる汗さえ美しい。
 まるで女神のようだ。

 ――いや、違うな。

「菜月、おまえは俺の女神だ」

 思わず口に出していた。
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