【6/15番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜

【side菜月】

 病院に入院してから出産までのあいだは怒涛の展開だった。
 今でもところどころの記憶が曖昧だ。

 ただただ痛くて苦しくて。

 けれどずっと手を握ってくれた臣海さんの手の力強さと温もりと、心配そうに何度も呼びかける声だけは鮮明に覚えている。
 
 ――ふふっ、あんなに完璧な人が。

 冷徹ホテル王だとか傲慢だとか。

 以前はあんなふうに呼ばれていたのが嘘みたいに丸くなって。

 とうとう昨夜は『俺が変わってやりたい』とか『俺は役立たずだ』なんて涙声で言い出した。

 ――そして今は……。

「菜月、おまえは俺の女神だ」

 臣海さんが真顔でそう言ってのけるものだから、部屋で美月の様子を見ていたドクターやナースが「えっ!?」という顔で振り返った。

 私と目が合うと、2人とも「仲がよろしいですね〜」、「素敵な旦那さま」とクスクス笑いつつ美月を連れて退場していく。

 ドアが閉まるのを確認してから私は膨れっ面をしてみせた。
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