【6/15番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜
 再来週の日曜日は『父の日』だ。

 菜月は中一で父親を亡くしており、俺の父を本当の親みたいに大切にしてくれている。

 息子の美月(みつき)が生まれたときにはマタニティクリニックを訪れた父と義母の千春(ちはる)さんに喜んで美月を抱かせていたし、その後もお宮参りやお食い初め、誕生日など特別な集まりには必ず声を掛けてくれている。

 今ではあの二人も俺を飛び越して菜月に直接連絡してくるほどだ。

 他にも父の日や母の日などのイベント時には欠かさず贈り物をしてくれているのだが、結婚四年目に突入してそろそろプレゼントのレパートリーが尽きかけてきたのだろう。

 ――何でもいい……では不正解なんだろうな。

 長年両親との確執があった俺は、菜月と結婚するまで『家族の行事や祝い事』というものに無関心だった。

 当然父親が好きなものなど知らないし贈り物をしたこともない。

 唯一手作りのパンケーキを思い浮かべたが、あれはプレゼントというよりも、子供なりの小賢(こざか)しい機嫌取りだった。
 父はそれなりに嬉しかったようだが、俺的には胸がギュッと苦しくなる(にが)い記憶だ。

 俺の心情を(おもんばか)ってか、菜月は『私が好きで勝手にすることだから臣海さんは気にしないで』と言ってくれている。

 その言葉に甘えてずっと菜月に任せてしまっていたけれど……久遠家の長男としても菜月の夫としても、いつまでも彼女に丸投げではいけないのだろうと思う。

 ――いつまでも逃げてちゃ駄目だよな。
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