【6/15番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜
 窓を開けて見上げると、父が右手を差し出してきた。

「臣海、父の日おめでとう。おまえももう、立派な父親だな」

 目の前の右手を握りしめると、俺の手のほうが彼のそれより大きいことに気づく。

 俺はすぐに手を離して「じゃあ行くよ」と窓を閉め、本格的に泣いてしまう前に急いで車を走らせた。

 すぐそこの角を曲がる直前にバックミラーをチラリと見ると、父がまだ家の前に立って車を見送っている。

 自分でも何なのか判断がつかない感情が込み上げてきて、決壊したように涙が溢れ出した。
 俺は濡れた頬を右手の甲でグイと拭った。

「立派な父親……か」

 久遠家に入って二十六年。俺は今日やっと、本当の意味で『久遠臣海』になれたような気がする。
 そしてあの人の息子にも。

「……菜月に会いたいな」

 脳裏に菜月の顔が浮かぶ。早く帰って彼女に感謝の気持ちを伝えたい。彼女を力いっぱい抱きしめたい……と無性に思う。
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