【6/15番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜
「ここって客室じゃなくて臣海さん専用のお部屋?」
「ああ、元は父が使っていたらしいが、俺がニューヨーク店の総支配人になったときに譲り受けた」
臣海さんは大学卒業後すぐに『KUONホテルグループ』に就職し、新宿本店を皮切りにグループ店での修行を経て、30歳の時に総支配人としてニューヨークに配属されたという。
「まあ、それから2年弱で日本に呼び戻されてしまったがな」
私がスマホで読んだ情報は、この辺りのことだろう。
CEOだった父親が脳梗塞で倒れ、臣海さんがその職を引き継いだ。元CEOはその後リハビリを経て回復し、今は会長職に就いていたはずだ。
――あれっ? だとしたら、臣海さんは本社ビルのある新宿にいるはずなのでは?
「臣海さん、どうして今、ニューヨークに?」
「……視察だ。まさかその途中で菜月に会うとは思っていなかったが、ラッキーだったな」
こちらを振り返りニヤリとする彼の顔を、私はグイと前に向ける。
「コラっ、急に動いたら危ないでしょ。ドライヤーでだってヤケドすることがあるんだからね。それに、いつもこんなふうに髪を濡らしたままなの? しっかり乾かさないと……」
そこまで言ったところでハッとする。
――ああ、こういうところだ。