【6/15番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜
優也さんに言われた『オカン』という言葉が蘇る。
忙しい母に代わり双子の弟達の面倒を見てきたからだろうか。私はついついお節介モードになってしまうらしい。
優也さんの前では上品ぶっていたつもりでも、何かとそういう面が出ていたのだろう。
手作りのお弁当が、その最たる例だ。
料理をしない彼はアパートのキッチンにほとんど調理器具を置いていなくて、食事は出前や外食で済ませるのが常だった。
国際線のパイロットは海外でのステイが多いから、それも仕方がないとは思う。
けれど私は彼の栄養面が心配になった。
『せめて中華鍋だけ持ってきていい?』
そう聞くと、優也さんに『物がごちゃごちゃするのが嫌だしキッチンが汚れるのも好きじゃないんだ。代わりに菜月のお弁当を食べたいな』と言われて。
張り切って作っていった重箱入りのお弁当を褒められた私は、それから彼の部屋に呼ばれるたびにお弁当を持参していた。
――美味しいよって喜んでくれてたのにな……。
今ならわかる。彼がアパートで料理をさせてくれなかったのは、浮気がバレないための防護策だ。
それまで何も無かった棚に調味料が並べられ、見知らぬ鍋が置かれていたら、本命の浅野さんに不審がられるに決まっている。
よかれと思っていた私の言動は、優也さんにとってはただの迷惑で。
そして楽しかったはずの思い出は、今となってはただの黒歴史に変わってしまったのだ……。