【6/15番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜
「このモッツァレラチーズ、ミルキーで美味しい!」
「チーズ単品で売ってるみたいだぞ。買って帰ればいい」
「でもどうせならフレッシュなうちにカプレーゼにしたいし……今回は我慢かな」
「だったら今夜、俺の部屋で作ればいい」
――えっ?
不意に優也さんのことを思い出した。
彼は自分の部屋で料理されることを嫌ったけれど、この人はそうじゃないのかな。
堂々と遊んでいるから、他の女性の影を隠す気が無いのかもしれない。
そんなふうにぼんやり考えていたら、「他にも食材を買っていくか?」と聞かれ、顔を上げた。
「ニューヨーク店で総支配人をしていた頃はたまに料理もしたんだが、今はこっちに半年に一度来るかどうかで、冷蔵庫が空っぽなんだ。調味料も新しいのを揃えたほうがいいだろうな」
口をポカンと開けて言葉を発しない私に、臣海さんが怪訝な顔をする。
「おい、どうした。お腹が痛くなったか? カプレーゼよりもお粥にしたほうが……」
「臣海さん、自分で料理をするんだ」
「はぁ? 俺を見くびるな。なんなら菜月よりも上手いぞ」
「私は年季が入ってるから、臣海さんに負けるはずがない。まあ、高級フレンチとかは無理だけど」
「俺だって年季が入ってる。よし、今夜は食べ比べだな。一緒に作って一緒に食べよう」
――一緒に作って一緒に食べる。
以前の恋人からは最後まで聞くことができなかった言葉だ。
それをあっさりと言ってのけてしまう彼に、ときめかないはずがない。
それでも臆病な私は遠回しに探りを入れた。
「調味料なんか揃えちゃっていいの? 他の女性に嫌な顔されちゃうかも」
「遊びの女をプライベートな部屋に入れるはずないだろ。あそこに連れ込んだのは菜月だけだ」
「私だけ?」
――どうして私なの? 臣海さんは本気なの?
浮かれる気持ちに過去の痛い記憶がストップをかける。けれどその一方で、彼を信じたいと思っている自分もいて。