【6/15番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜
それからカフェで支払いを済ませ、チーズとメープルシロップのお取り置きを頼んだ私たちは、そのまま広い通りをゆっくり歩き出す。
「……何が欲しい? バッグか? アクセサリーか?」
「えっ?」
「すぐそこが5thアヴェニューだ。何でも好きなものを買ってやる」
たしかにこのまま北上すれば5thアヴェニューだけど、まだ正式に付き合っているわけでもない立場でプレゼントをしてもらうのは気が引ける。
――今のカフェも臣海さんが払ってくれたし……。
代わりに夕食の材料を私が買おうと思っていたのに、これ以上お金を使われては釣り合いが取れなくなってしまう。
「今日は少しブラブラしてから食材だけ買って帰らない?」
臣海さんが欲しいものがあるなら買い物に付き合うが、そうじゃなければ無駄な出費をさせたくない。
そう言う私の提案に、なぜか彼は不思議そうな顔をする。
「菜月は本当に変わっているな。普通どの女もプレゼントをされれば喜ぶものなのに」
その言葉に彼の今までの付き合い方が垣間見えた気がした。
「へっ、へ〜っ……、今まで、たくさんの女性に贈り物をしてきたんだ」
「贈り物というか、寝た後で別れ際に好きなものを買ってやれば後腐れなくて楽だっただけだ。お金だとプライドを傷つけられたとかって怒る女もいるからな」
心臓が痛い。ギュウッと雑巾みたいに締め付けられて、息をするのが苦しくなる。
――やだ、こんなのとっくに……。
臣海さんに嫉妬されて嬉しいとか、キスされてときめいたとか。
彼の反応に浮かれていたけれど、嫉妬しているのは私のほうだ。
身体の関係を拒んだのは私なのに、臣海さんにお試しの付き合いだと言わせたのは自分自身なのに。
それをすでに後悔し始めているなんて、とっとと抱かれて本当の恋人になっておけばよかったと考えているなんて……そんなの恥ずかしくて言えやしない。