【6/15番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜

 これが無駄な足掻きだとはわかっている。どうせ接客の際にはじっくり顔を合わせることになるのだ。
 それでもほんの少しでもそれを長引かせたいと思うのは仕方がないと思う。だって彼は……。

 ――お願い、どうか気づかないで! いや、忘れていて!

 そんな私の願いも(むな)しく、目の前でピタッと止まった足は、数秒たってもその場から動く気配がない。

 仕方なくゆっくり頭を起こすと、そこには目を大きく見開きこちらをジッと凝視する、彼……久遠臣海(くおんおみ)の驚きの顔があった。

「おまえ……」
「ヒッ!」

 次の瞬間、驚愕の表情から鬼の形相に変わった彼が私の手首を勢いよく掴む。

「やっと見つけた!」


 ――ああ、やはり彼はあの日のことを覚えているんだ。

 2年前の、あの一夜を。

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