【2/4 番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜
「そうか、それでは君のおすすめの赤ワインをいただくよ」
「かしこまりました」
「エプロンが似合ってるね」
すると菜月は周囲をキョロキョロと見渡してから、俺の耳元に顔を寄せて囁いた。
「ちょっとこれ、どういうプレイ!?」
――ぶはっ! プレイって!
「ふっ……ハハハッ!」
俺が大笑いして皆の注目が集まると、菜月は慌ててギャレーへと逃げ込んで行く。
シャッとカーテンを閉める瞬間に、思い切り俺を睨みつける赤い顔が見えた。
――怒ってるかな、まあ、怒っている顔も可愛いが。
俺は皮張りのシートに背を預けつつ、機内で俺を出迎えた際の、なんとも複雑な菜月の表情を思い出す。
驚いたような困ったような、それでいて少しはにかんで嬉しげな……。
『ちょっと、どうして? 仕事は?』
早口で囁いた彼女に『大丈夫だから』と短く答えてシートまで案内してもらったが、そりゃあ驚いたに違いない。
俺自身、自分が女のためにここまでする男だとは知らなかったし、そんな情熱を持ち合わせているとも思っていなかったのだから。