一途な外科医は彼女の手を繋ぎ止めたい
「由那ちゃん、夕飯は…どうする?」

もう帰るのかと思っていた。
お昼をのんびり食べ、映画を見たので時間的にはそろそろ夕飯だけどまだお腹は空いていない。
でもまだ話していたい。
どうしよう。

「お腹はそんなにまだ空いてないんです……原島さんは?」

「あぁ、そうだよな。まだそんなに空いてないけど、まだ時間があるなら、その、もう少し話さない?」

「はい!」

恥ずかしさにうつむき加減になりながらも元気に返事をした。

「なら少しだけ飲みに行こうか。飲める?」

「少しだけなら飲めます」

「じゃ、近くにあるお店にしよう。帰りたくなったら言って。初めてちゃんと会ったのに飲みに誘われて、女の子は不安だろ」

「ありがとうございます。原島さんはキキからの信頼も厚いし大丈夫です。でも家族に遅くなるとは言ってないので早めに帰ります」

「キキか。可愛いよな。走っていても余裕なのか俺の顔見ながら走るんだよ」

「そうなんですね。ふふふ、キキは原島さんが好きなんですね。うちの兄には振り向きもしないのに」

「お兄さんがいるの?」

「はい。4個上に1人います。海外にいて最近帰国したんですけど家に来てもキキは知らんぷりしてましたよ」

「そうなの?キキはみんなに愛想がいいのかと思ってた」

「原島さんには特にだと思いますよ。原島さん、キキはどのくらいの確率で走ってる時に現れます?」

「ん?最近は100%だよ」

「やっぱり……。毎日散歩に行ってるんですけど私はいつも噴水の周りとかを歩いてるんです。走ってる人の邪魔にならないように。けど原島さんがいる時には一目散に外周コースへ向かっていくんです。リードを引いても言うこと聞かないくらい尻尾を振りながら向かっていくんです。毎回だと迷惑かと思って違う公園にたまに行こうと思うのですがキキはそれも嗅ぎ分けているのか原島さんがいる日は他の公園に行かないんです。100%ってことは多分原島さんがいない日に違う公園に行ってるんですね」

「すごいな、キキ。でも由那ちゃん、全然大丈夫だからコースを変えることないよ。かえって1人で走るとつまらないからキキが来てくれると嬉しいよ」

私たちは話しながら近くにあったダイニングバーに入った。
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