一途な外科医は彼女の手を繋ぎ止めたい
私も原島さんと同じくビールを注文し、2人で乾杯をした。

「由那ちゃんのおかげで久しぶりに楽しい休日が過ごせたよ。ありがとう」

「そんな……私もとても楽しかったです。誘ってくれてありがとうございました」

「由那ちゃんが今日付き合ってくれなかったら家でゴロゴロと過ごしてたと思うよ。普段忙しいからたまに連休もらっても予定を立てることさえ疲れちゃってさ。でもいざ休日になってみたら周りは楽しそうなのに俺だけつまらなくて寂しくなってたから本当に救われたよ」

「私なんてもっと長い連休なのにやることなくて暇だったから恥ずかしいです。でもとても楽しい休日になりました。ハワイ料理も映画も楽しかったです」

また他愛のない会話が始まるが途切れることはなく、会話が弾んでいる。

どうしよう。
楽しくて仕方ない。
原島さんはどう思ってるんだろう。
彼のビールを飲む姿にドキッとする。ジョッキを持つ手が骨張っていて器用そう。その割にしっかりした筋肉もついている。

「原島さんは走るのが好きなんですか?」

「あぁ。体力作りのためにね。昔はラグビーをしてたんだ。この細さだからスクラムは組めなかったけど走るのは得意だからそっち方面でね」

「ラグビーですか。すごいですね。ポジションとかルールとかよく分からないけど最近ワールドカップとかもあったから人気スポーツになりましたよね」

「そうだね。海外だとポピュラーなんだけど日本はまだまだだったから競技人口が増えたらいいなとは思うよ。本当に面白いスポーツだから」

「そうなんですね。うちのお兄ちゃんがアメフトしてましたよ。ムキムキしてたけど原島さんはそんな感じじゃないですね」

「食べても太れないんだよ。だから体が大きくなるって感じではなかったかな。体質なんだろうね」

うちのお兄ちゃんなんてアメリカでジャンクフードばっか食べてるからあんなになったんじゃないかな、とは思うけどお兄ちゃんの話はいいや。

「由那ちゃんはスポーツしないの?」

「中学からテニスをしてましたけど社会人になったからはしてないですね。あの頃は楽しかったなぁ」

「え、ならテニスやろうよ。俺もテニスやってた時期あるよ。テニスならお互いブランクがあるから出来るんじゃない?」

「もう走れないですよ。無理、無理!」

「そう?楽しいかなって思ったんだけどな」

「またやりたいとは思ってたけどもう動けないと思うんです。あの頃はがむしゃらに頑張ってたんですけどね」

「由那ちゃんまだ若いだろ」

「9月の誕生日が来たら26です」

「じゃ、まだ25だろ。俺なんて29。今年30になる年だよ」

「原島さんは若く見えますね」

私より5つ上か…。
たしかに落ち着いてるから年上だとは思ってた。
相手を退屈にさせない気遣いといい会話といい大人だと感じるもんなぁ。

「おじさんだと思った?だから体力維持のために走ってるんだよ」

「まさか、そんなこと思ってないですよ。でも5つ上なんだなぁって思っただけです」

お兄ちゃんと同い年とは思えないくらいに落ち着いてるし格好いい。
5つ離れているのにこんなに会話が弾むなんて心の底から楽しいと思ってしまう。
今日初めてゆっくり話した人にこんなにも自分をさらけ出して会話ができるなんて不思議。

ついつい話し込んでしまったけど8時を過ぎ、そろそろと思っていると原島さんも声をかけてくれる。

「由那ちゃん、本当に楽しかったよ。ありがとう。明日も散歩に行くんだよな?俺も明日も休みだから走りに行くつもり。また明日な」

そういうと駅で分かれた。
振り返るとまだ後ろで手を振っていてくれわたしを見送っていてくれる。
何度も何度も振り返りながら後ろ髪引かれる思いで手を振った。
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