冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~

「隙を見せすぎだ」
「えっ?」
「俺が気づかなかったらどうするつもりだった? 性被害は体と心の両方に一生の傷を負うんだ。口先だけの謝罪や金なんかで解決するものじゃない」

 厳しい口調で言い募る郡司さんの瞳には、怒りの感情が滲んでいた。

 きっと、弁護士としてたくさんの被害者を見てきたのだろう。その言葉には性犯罪への憎しみが実感としてこもっていて、説得力がある。

 私はすぐに自分を顧みて反省した。嫌なら嫌と、難波さんがまだ紳士的な態度だった頃に言うべきだったのに。煮え切らない態度を取ったせいで、結果的に他人である郡司さんにまで迷惑をかけてしまった。

「すみませんでした。今後は、同じ目に遭わないように十分気をつけます。では……」

 これ以上郡司さんの前には居づらくて、彼の目を見ないようにして会場の中心へ足を進めようとした、その時。

「まったく、学習能力のない――」

 ため息とともに郡司さんのそんな言葉が聞こえて、振り向いた時には郡司さんの手が私の手首を握っていた。

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