冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~
愕然とした俺は、胸の内で〝振り出しに戻った――〟とつぶやいた。
ひとりで暮らす母親の買い物を手伝うくらい、息子なら当然の役割かもしれない。しかし、芽衣を失って絶望の淵に立たされていた俺は、「しばらく休みはない」とそっけなく返事をして、電話を切った。
ソファにスマホを放り投げ、背もたれに深く寄りかかって目元を手で覆う。
「なにがどうなってるんだ……」
ため息交じりに呟いたその瞬間、ふと芽衣の手紙の最後に、母を案じた言葉があったのを思い出す。
再度手紙を開いてみると、芽衣は母を心配し、信頼のおける精神科医の名とその先生が勤務する病院の情報まで記してくれてあった。
……まるで、こうなることを予期していたみたいだ。
俺は母がカウンセリングに通い出しただけで安心してしまったが、専門家の芽衣には思うところがあったのかもしれない。それで、やはり俺とは付き合えないと……。
それにしても、別れた相手の母親まで思いやるとは、なんというお人好しだろう。しかし、それが逆に芽衣らしい。
ふっと苦笑を漏らすのと同時に目の奥が熱くなり、視界が揺らめいた。
ダメだ……。あまりにも俺の中で芽衣の存在は大きくなっていて、簡単に吹っ切れそうにない。