冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~

「いつの話してるんだよ。とっくにフラれてる」
「そう……。じゃ、別の方とお付き合いは?」
「してない。……って、質問攻めだな。母さんは俺の心配しないで、自分の治療に専念して。今は恋愛より、母さんが昔みたいに笑えるようになったことの方が、俺にとっては大事なんだ」
「至……。ごめんね、本当にごめんね」

 なぜか洟を啜って泣き始めてしまった母に俺は慌てた。

 精神状態はだいぶ安定してきたとはいえ、時折情緒が崩れることはまだある。あまり刺激しないような会話を選ばないといけないな。

 こういう時、芽衣が近くにいれば安心できるのに……。別れて一年経ってもなお未練が絶ちきれない俺は、もしかしたら一生独身かもしれない。

 だからといって出会いを求める気にもなれず、母の通院と弁護士の仕事に追われ、気が付けば彼女と別れてから長い月日が経っていた。


 * * *


 ――そして現在。

「戻りました」

 芽衣の自宅を後にし、三船法律事務所の小ぢんまりしたオフィスに戻る。

 すると、所長の三船京一郎(きょういちろう)さんと、彼の妻でパラリーガルを務める蘭さんが、鼻息荒く俺に詰め寄ってきた。

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