冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~

「お父さん、具合悪いのか?」

 三船さんがそう言って、俺のデスクに歩み寄る。

「はい。どうやら末期がんのようで……遺言を書くのに立ち会ってほしいと。不思議ですよね。一度は〝死んでしまえばいいのに〟という思いが頭をよぎるほど憎い相手でも、実際死んでしまうかもと連絡を受けたら、落ち着いていられないなんて」

 三船さんには、弁護士を目指した経緯と合わせて、過去の父がした非情な言動を話したことがある。

 その時は『お前の親父さん、相当クズだねえ』なんて言っていた彼だが、今は俺と同じように神妙な面持ちだ。

「弁護士やってると、思うけどさ。憎むべき相手がいなくなるのもまた、被害者を苦しめるんだよな。真実は闇に葬り去られ、憎しみのぶつけどころもなくなってしまう。お前も複雑だろうが、幸い親父さんはまだ生きてる。この際言いたいこと全部ぶちまけてこい。親父さんも、お前に恨まれてることは重々承知で頼んできたんだと思うぞ」

 ポン、と三船さんに肩を叩かれ、俺は黙って頷くと事務所を出た。

< 187 / 223 >

この作品をシェア

pagetop