冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~
三船さんの言うとおりだ。父を憎んだまま、なにも知らされないうちに死なれていたら、俺は別の意味で苦しんだかもしれない。会えるうちに会って、言葉を交わすべきだ。
アンタのせいで青春時代は暗かったが、そのぶん、今とても幸せだって自慢してやればいい。
かわいい娘は三歳で、近いうちにきっとまた家族が増える。幸せな家庭を築けなかったアンタは、せいぜい天国の上で悔しがれって。
ま、あんなに下劣な不倫をした父のことだから、地獄生きかもしれないけれど――。
頭の中には次々と憎まれ口が浮かぶ反面、死期を目前にした父と会うのが漠然と怖かった。いつでも偉そうに上から目線でものを言う、憎らしい父の姿はきっとない。
最期くらい、穏やかに見送ってやるべきなのか……?
ぼんやりそう思いながら車を運転し、俺は都心から離れた青桐がんセンターへと向かった。
病院に到着してすぐ、電話でも話した担当看護師の新沼さんが、俺を案内してくれる。
緩和ケア病棟に足を踏み入れるのは初めてだったが、想像していたより明るく開かれた空間で、一般病棟とそれほど変わらない印象を受けた。