冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~

 日当たりのよい病棟の一角にはテーブルや椅子の置かれたラウンジがあり、何人かの患者が談笑している。

「このラウンジでは、季節ごとに催しをするんです。来月は高校生が和太鼓を演奏しに来てくれるんですよ。普段はどうしても変わり映えしない生活ですから、そういう催しを患者さんのほとんどが楽しみにしてくれています」
「なるほど……では、父も?」
「ええ。つい先日も七夕の行事があったのですが、お父様は真剣に短冊に願い事を書いていました。ラウンジの隅にまだ飾ってあるので、お帰りの際にでもゆっくりご覧ください」

 新沼さんは見た目からまだ二十代だと思われるが、その話しぶりからは緩和ケア病棟での仕事に自信と誇りを持っている様子が窺えた。

 父の担当が彼女のような看護師でよかった。そう安心している自分に気づき、やはり俺は父が心配なのだと認めざるを得なかった。

 同情しているわけじゃないし、父のことは変わらず憎い。しかし、だからといって本気で死んでほしいわけでは決してなかったのだ。

 俺と母にした仕打ちを決して忘れず、十字架を背負いながらも生きていてほしい。それが正直な気持ちだ。

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