冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~
「こちらです」
ひとつの病室の前で足を止めた新沼さんが、ノックをしてドアを開ける。
すると中から話し声が聞こえてきて、先客か?と思いながらベッドに視線を向ける。
そこには、すっかり痩せて顔色の悪くなった父が、ベッドのリクライニングを起こして誰かと話している。
その〝誰か〟は見覚えのある制服姿の高校生。父のもうひとりの息子、俺の弟でもある塁だった。
「塁……?」
思わずそう声に出すと、塁もこちらに気づいて「兄貴」と手を上げる。父の視線もこちらを向いたが、俺は目を合わせる勇気が出ず、とりあえず塁に話しかけた。
「お前、学校は?」
「今、テスト期間だから半日」
「で、どうしてここに?」
「俺が新沼さんに頼んで呼んでもらったんだ。もちろん、母親の許可も取った」
塁の代わりに、父が答える。そこで初めて、俺は父をまっすぐに見据えた。元々シャープだった頬はさらにこけ、目元は落ちくぼみ、唇は呼吸をしているだけでも苦しそうに震えている。
想像していた以上に弱りきったその姿に、思わず胸が詰まった。