冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~

「そうですね……。お母様、なにか気を紛らわせるような趣味やお仕事は?」
「昔は裁縫が好きだったな。小学生の頃は、学校で使う袋だのなんだの全部手作りしてくれていた。でも、俺が中学に上がってから父親の不倫が発覚して、さらに父は相手の女性を妊娠させていたんだ。母がおかしくなったのはそれからだ」

 郡司さんは片手に持ったウイスキーのグラスに過去を映しているかのように、虚ろな瞳で琥珀色の液体を見つめた。

 容姿やステータス、なにもかもを兼ね備えた男性に見えていた彼の儚い表情に、胸がギュッと締めつけられる。

「もしかして、弟さんというのは……」
「ああ、不倫相手の息子のことだ。お互いの母親がかなりやり合ったから、俺は弟の存在も、相手方の住所や連絡先も知っていた。俺は弁護士になってすぐ弟に会いにいき、『なにか困ったら連絡してくれ』と名刺を渡したが、それっきりだ。当時、弟はまだ小学生だったからな。名刺なんてすぐに捨ててしまったかもしれない」

 父親の不倫の末にできた、母親が違う兄弟。彼が『弟に嫌われている』と言ったのも、お母様が郡司さんだけを溺愛するのにも納得だ。

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