冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~
お母様にとっては、今自分が見ている世界が真実。誰になんと反論されようと、すぐにその状態を改善するのは難しい。……今は、受け入れるしかないようだ。
「……わかりました」
〝別れます〟と口にする勇気はなくて、ただそれだけ言った。お母様からの返答はなく、プツッと電話が切れる音がする。
間もなく至さんが戻ってきて、飲み物のプラスチックカップをふたつテーブルに置いて席に着く。
「電話、大丈夫だったか?」
「……ええ。優しいお母様ですね。至さんを大切に思っているのがよくわかりました」
なんとか言葉を探して、そう表現するのが精いっぱいだった。
「それにしたって過保護なんだよ。昨夜、母に今日の予定を聞かれてとっさにデートのことを話してしまったから、おそらく電話もわざとだと思う。本当に、不快になるようなことは言われてないか?」
私は微笑みを作って頷いた。嘘をついたわけではない。不快というより悲しかったのだ。
至さんを自分の元に引き留めなければ心の安定が得られない、お母様の精神状態が。