冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~
なにもかも投げ出したくなりつつも、鳴り続けるスマホを手にコンビニの外に出る。私は感情を締め出し、一度深呼吸をしてから通話をタップした。
「はい、観月です」
《どうして電話がかかってきたのかわかっているわね? 芽衣さん》
スマホから聞こえてきた声は、予想通り至さんのお母様のものだった。彼女の言う通り、用件にも見当がつく。私と至さんが未だに別れていないことに、文句を言いたいのだろう。
「ええ。……時間がかかってしまい申し訳ありません」
《まったく、どんな色仕掛けであの子に迫ったか知りませんけどね、図々しいのよあなた。さっさと至の前から消えなさい》
非情な言葉の数々をナイフのように突き立てられ、目頭が熱くなった。
お母さまは心を病んでいる。これは病が言わせているだけ。
必死で自分に言い聞かせても、つらさは消えてくれない。
黙ってその痛みに耐えていたら、お母様がため息交じりに言う。
《もしかして、手切れ金にいくらか要求しようとしているのかしら? いいわ、それで至が返してもらえるなら払いましょう》
「いえ、私、お金なんて……!」
《だったらすぐあの子と別れてちょうだい。あの子がいないと私は死んでしまう》