冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~

 死んでしまう――。そんな言葉を吐くほどに、お母様は追い詰められているのだ。

 彼女の切実な訴えに反論するエネルギーは、もうなかった。

 これ以上ひどい言葉を、お腹の子に聞かせるのも心苦しい。ママがおばあちゃんに嫌われていると、思ってほしくない。

 ……至さん、ごめんなさい。

 私はちぎれそうな胸の痛みを無視して、自分の感情に蓋をした。

「わかりました。至さんとは別れて、今後一切、関わらないとお約束します」
《そう。その言葉を聞けて安心したわ。それじゃ、ごきげんよう》

 スマホを耳から離すと同時に、張り詰めていた感情の糸がプツッと途切れ、涙で目の前がなにも見えなくなった。

 きっと、至さんとは最初からうまくいかない運命だったのだ。もともと私は彼の好みじゃなかったんだもの。お母様の悩みを聞いてあげたことで絆されただけだ、きっと――。

『芽衣』

 なんとか自分を納得させようと理屈をこねるのに、頭に浮かぶのは、愛おしそうに私の名を呼んで微笑む彼の顔ばかり。

「至さん……」

 断ち切れない想いを抱えたまま、私はスマホの電源を切ってフラフラと帰路に就く。

 すれ違う人々に泣き顔を指差されたけれど、隠そうとする意思もなかった。

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