冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~

「ママ」

 仕上げのリップを塗り終わったところで、目を覚ました成優が洗面所にやってきた。成優はくりっと丸い瞳で私の顔をジッと見つめて、遠慮がちに言う。

「なゆもおけしょうしたい」
「えっ?」
「かわいくなりたいの。……やまとくんにあうから」

 二歳十カ月という年齢にして、すでに乙女の顔をしてモジモジする成優。

 なるほどそういうことかと納得した私は、持っているリップの中で一番淡いピンク色を選び、ブラシを使って成優の小さな唇にのせてあげた。

「どう?」
「うん。かわいい。あと、ほっぺも」
「はいはい」

 リップとチークで満足した成優をよそ行きのワンピースに着替えさせ、自分もきれい目なベージュのセットアップに身を包む。

 それからトイレを済ませ、プレゼントを持って家を出た。

 最寄駅から電車を乗り継ぎ、およそ二十分。しっかり成優の手を引いて、南青山の高級マンションを目指す。

 シングルマザーで慎ましい暮らしをしている私とは対照的に、妹の叶未は勤め先であるジュエリー企業の社長、久宝大和(くぼうやまと)さんと結婚し、華々しい生活を送っている。

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