冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~
「ご馳走さま。うまかった」
ご飯のひと粒も残さず親子丼をきれいに平らげた至さんが、同じく空にしたサラダの器と丼を重ね、手に持って立ち上がる。
「あっ、いいです、お客様なのに」
慌ててその手から食器を奪った瞬間、至さんの手に触れる。
ドキッとして手元が狂い、私の手から食器が滑り落ちた。ガシャン、と派手な音を立てて割れた食器が、床一面に散らばる。
「ご、ごめんなさい……すぐ片付けますから」
「直接触れるな。怪我をする」
しゃがみこんで破片に手を伸ばした瞬間、同じ目線に屈んだ至さんに手首を掴まれた。
急な接近に心臓が飛び跳ね、彼を直視できない。割れた食器に視線を落とし、耳の奥でドクドク鳴る自分の心音を聞く。至さんも何も言わず、私の手首を握りしめたまま。
触れている部分から、私の激しい鼓動が彼に伝わってしまわないか不安になる。
「ママー、いまのおと、なーに?」
その時、不意に和室の方から駆け寄ってくる成優の足音と声がして、至さんがパッと手を離す。
私は金縛りが解けたように立ち上がり、成優に向かって返事をする。