記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される
彼は当たり前のように私を抱き寄せる。
私の顔が埋もれてしまうくらい、布団を引き上げてかけてくれる。

「おやすみ」
ゆっくりと背中をさすりながら、話始めた。
「眠れるように、俺の昔話。」
そう言って話始めたのは、彼の大学時代の話や留学してすぐの話、幼いころバスケットボールチームに入っていた話・・・。
私の知らない彼の時間が、まるで見えるかのような話。

私はぼんやりと話を聞きながら、いつの間にか眠りについた。

彼は私と一緒に眠る時、私より先に眠らず、私がちゃんと眠ったのを見届けてから寝てくれる。
少しでも体を離そうとすると、すぐに気づいて抱き寄せてくれる。

温かなぬくもりが、全身に伝わり私はよく眠れた。
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