記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される
まぶしさに目を細める私。
紫苑はすっかり医者の顔になって私の脈をとりはじめる。

「どこも痛まないか?頭痛は?」
手首や首に手をあてて私の脈をはかっていた紫苑が私の顔を覗き込む。

「あなたに・・・会いに行こうと・・・」
自分でも驚くほど自分の声が震えていることに気づく。
「紫苑さんに・・・知らせようとしてた・・・」
「ん?」
紫苑の表情が急に驚きに変わる。

「思いだしたのか!?」
希望に満ちたその表情に、少し申し訳なく感じながら首を横に振る。

「事故に遭った日のことが・・・夢の中で・・・映像になって見えた・・・」
「・・・そっか」
少しがっかりしたような表情の彼。
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