記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される
「私・・・思いだせるかもしれない・・・」
「あぁ。そうだな。きっと思いだせるな。」
紫苑はそう言って私を抱き寄せる。

優しく優しく。

そっと抱き寄せて、抱きしめてくれる。
ゆっくりと背中をさすってくれる。

「俺に知らせようとしてくれてたんだな。桐乃は・・・俺に。」
「・・・」
かすかに紫苑の声が震えている。
「ごめんな。そばにいてやれなくて、ごめんな。」
後悔が痛みとなって私にまで伝わってくる。

記憶のない私が今何を言っても、彼を励ますこともなだめることもできない。
そうわかっていても、私は必死に首を横に振る。
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