記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される
「・・・っ」
急に頭痛がして私は体に力を込めた。

「痛むか?」
「・・・頭が・・・いたい・・・」
そこからは私は意識がもうろうとしてしまって覚えていない。

耳元で紫苑がナースコールして、医師や看護師が英語で会話をしながら慌ただしく処置された音だけかすかに覚えている。

『記憶が少し戻った後、すぐに頭痛を訴えました。』
『CTをオーダーしよう。』
『産科の医師も呼んで』
『鎮痛薬の量を少し増やそう。』

「桐乃、大丈夫だ。大丈夫だからな。」
紫苑の言葉だけ、はっきりと耳にやきついていた。
< 52 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop