記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される
「支度しようか。立てる?」
紫苑が私に両手を出す。
私はその手を握る。

「ゆっくりだ。」
いつもこうして彼は私を立ち上がらせてくれる。
歩いているときは手を繋いで腰に手をまわし、転ばないようにと支えてくれる。

私の1.5倍は長い足。
私よりもかなり早く歩くことができるであろう彼は、私のあまりに遅いペースに合わせてくれていることが分かる。

「着替えよう。」
彼が当たり前のように、私のパジャマに手をかけたところで私ははっとした。
「え?」
まさか彼が私を着替えさせるつもり!?
慌てて後ずさる。
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