記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される
彼が持ってきてくれたのは、私好みのワンピースとカーディガン、それから温かなタイツだった。

「終わりました」
私の言葉にすぐに振り向いた彼。
「桐乃が服を着てると、やっと帰れるって実感するな。」
嬉しそうに頬を緩めながら、紫苑はまだ私が羽織っていなかったカーディガンを羽織らせてくれる。

「髪、セットしようか。」
「・・・」
私の髪は半年前よりも伸びている。
胸くらいの長さの髪。
セットするって、彼はどうするつもりなのだろうか。

紫苑の動きを病室にある鏡越しに見ていると、彼は慣れた手つきで私の髪をとかして、ヘアアイロンまでかけてくれた。

毛先を微妙に巻いているあたり・・・これは初めての手つきじゃない。
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