一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
「お前が乾井さんの元に嫁げば、家族みんなが助かるんだ。わかるな?」

 家族と言われて思い浮かぶのは妹の顔だけだった。
 病弱な妹を見捨てるわけにはいかない。

「……わかりました。その代わり、千歳の大学と病院のお金だけはお願いします」
「わかっている。自分の娘だ。大学の費用はなんとかしてやろう」

 ――私の未来は決まってしまった。

 涙がこぼれそうになった。
 でも、継母の前ではなきたくない。
 この場から一秒でも早く立ち去りたかった。
 逃げることなんてできないのに私は逃げたいと思っていた。
 ほんの少しの時間でもいいから、今はなにも考えたくない。

 ――自分の閉ざされた将来のことなんて、誰が考えたいと思うの?

 ティールームから出て、一人になった瞬間、私は泣いていた。
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