一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
第3話 パリ行き
「ひどい顔……」

 鏡に映った自分の顔に苦笑した。
 泣いたせいで目は赤く腫れ、メイクは落ち、疲れきった顔をしている。

 ――もらったばかりのハンカチを使ってしまった。

 他人のほうが、私に優しいなんて、なんだかやりきれない。
 子供みたいに泣いてしまった自分に落ち込んだ。

「メイク、落とさなきゃ……」

 『Lorelei(ローレライ)』のスーツを着替え、メイクを落とした。
 アパートの部屋には、私と妹の写真が飾ってあり、写真が目に入った。

「しっかりしないと……。千歳(ちとせ)には大学進学を諦めさせたくないし、仕事だって、まだ辞めなくていいんだから、泣いてる場合じゃないわ」

 働きだした私は、千歳が入院を終え、戻ってきたら一緒に暮らせるように、一人暮らしにしては広めの部屋を借りた。
 父と継母がいる家に、千歳一人を残したくなかったからだ。

 ――頑張るから、千歳には生きててほしい!

 父と継母は、私の弱みが千歳だとわかっている。
 だから、このお見合いからは逃れられない。
 
「でも、結婚してみたら、いい人かもしれないし……」
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