一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 リセのキスは癖になる。
 容姿だけじゃなくて、リセという存在は、人を惹きつけるための甘い蜜をまとっているに違いない。

 ――なんだろう。花。花を思い出す。

 一瞬だけ思い出した記憶は、柔らかな唇の感触とともに、闇の中に沈んだ。

「あ……リセ……」

 唇を舌がなぞり、口を開けろと命じる。
 この先を知ってしまったら、きっと私はリセ以外、誰も好きになれない――そんな気がして、肩を軽く押すと、リセはキスを止めた。

「リセ、私でいいの? 平凡だし、普通すぎて嫌じゃない?」
「普通は逆だろ? 俺のことが嫌なのかと思ったら、そっちか」

 リセは耳元で笑い、小さな声で『途中で止められる人間がいたんだな』と言っていた。
 今まで、どれだけの人を誘惑し、誘惑されてきたのか。
 リセだからこそ、許される言葉だ。

「俺を目の前にして堕ちないのは、普通じゃないから安心しろ」

 リセは笑うと、深いキスを止め、軽いキスを髪と頬に落とす。

「まるで恋人同士みたい」

 優しいキスがくすぐったくて、ふふっと笑うとリセが耳元で囁いた。

「恋人じゃない。琉永(るな)は俺を婚約者にするんだろ?」
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