政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
「お嬢は今日は外食か?」
『会社の友人と食事と聞いているけれど?』
「男も同席してるぞ。よく分からないが、大丈夫なのか? お前達は」

 電話の向こうがしん、とする。
 そして、低い声が聞こえてきたのだ。

『動けるか?』
「構わないが、俺はお前の犬じゃない」
『頼む。嫉妬で頭がおかしくなりそうなんだ』
 喉の奥から絞り出したような声は聞いたことがない。
 そこまでかよ、と槙野は思う。

 そんなに大事なら人任せにせずに閉じ込めてでもしておけばいいのに。

 片倉の財力ならば、それが可能なのに。
 槙野からしてみれば、浅緋に片倉がそこまでさせる何があるのか、全く分からない。

 槙野にとって、浅緋は箱入りで、もの知らずなお嬢様としか思えない。優しいのは厳しさを知らないからだ。
 優しいものだけに包まれてきたからこそ、身についたもの。

 それは周りにどれほど守られて、恵まれていることなのか、本当に本人は分かっているのだろうか。

 そう思うと、腹立たしい気持ちになってきた。
 こんな会、ぶち壊しになっても知るか。
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