政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
「片倉は急遽対応しなければいけない案件ができたので、ギリギリになってしまうと思いますが、レセプションには一緒に行くと言っていました」

 片倉が忙しいのは浅緋は分かっている。
 それについても何かを言うつもりはない。
 一緒に行くと言っているのだし、エスコートする意思はある、ということなのだから。

「はい」
「ではこちらへ」

 長野が案内してくれたのは、セミスイートのリビングがある部屋で、着替えたりしなくてはいけない浅緋のために広い部屋を用意してくれたのだろうと思った。

 相変わらず、浅緋には甘い。
 部屋にはドレスが用意されていた。

 さすがに今回は華やかな色というわけにはいかないという判断だろう。
 色は黒だったが、すんなりとしたラインのドレスの上から、シフォン素材のAラインのブラウスを羽織るタイプのものだ。

 シフォン素材は華やかさを損なわない。形もレセプションに相応しいものだ。
 用意されていた黒の高めのヒールはラメが入っていて華やかで、後ろにリボンがついていて、可愛らしい。

 品の良いパールのクラッチバッグが靴の箱の上に乗せられていて、浅緋はそこに必要なものを入れる。
 お化粧を直そうと思ってドレッサーの前に座ると、アクセサリーまで用意されていた。
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