政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 それなりのパーティであれば、浅緋がみすぼらしい格好をすることはひいては、片倉の顔を潰すことになってしまう。

 浅緋にはそんなことはできない。

 だから、遠慮なくアクセサリーも使わせてもらうことにしたのだ。
 パールが葡萄の房のように繋がった華やかなピアスと、同じシリーズと思われるネックレス。

 ドレスにもとても似合う。
 バッグと揃えてあるのもとても素敵だ。
 いつもだったら、こんなにセンスが良くて綺麗な格好に嬉しくなってしまうのだろうけれど、今の浅緋は気持ちのどこかが沈んでいる。

 勇気を出したいのに勇気が出ない。
 その時、部屋の呼び鈴が鳴った。

「はい!」
 返事をした浅緋は慌ててドアを開ける。
 外に立っていたのは、いつもより華やかなスーツの片倉だった。

「あ……、あの、お疲れ様です」
「浅緋さん、大丈夫でしたか?」

 何がだろう?
 そういえば、片倉はいつも浅緋の心配をしているような気がする。

 そんなに心配だろうか……。
 いや、確かにそれほどしっかりしているとはお世辞にも言えるわけではないんだけれど。

「はい。大丈夫です。ドレスもぴったりでした。アクセサリーまで、ありがとうございます」
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