政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 ロングヘアを片方の肩に流して、華やかなドレスと高いヒール。片倉相手でも堂々としたその態度に浅緋は臆してしまう。

「こちら、どなた?」
「婚約者なんですよ」
「そんな方いらっしゃったの? 初めて聞いたわ」

 部長、と呼ばれたからにはどこかの会社の偉い人なのだと分かるし、このパーティの中でも若い方なので、片倉と同じくやり手の人なのだろうと言うことも分かる。

 とても綺麗で、片倉に臆することのない落ち着いた大人の女性。

 こういう人が彼の隣に立った方がいいのではないか……そんな風に浅緋が思っても仕方のないことだ。

「そういう人がね、できたんですよ」

「ふうん? それで、先ほどからマーキングして回っているの?」
 マーキング?って何かしら?

「菜都さん、人をからかうのはやめてもらっていいですか?」
 片倉は少しだけうんざりした様子を隠しもしない。

 浅緋にはそれだけ仲が良いように感じられて、何となく胸がつきん、と痛む。
──胸が痛いわ。

 体調がおかしいのだろうか。
 今まで感じたことのない痛みだ。
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