政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 きゅっと胸が痛くて、寂しくて、片倉にこっちを見てほしいような。

「だってー、今までどんな女性にも靡かなかった片倉さんがねえ……片時も側から離さない女性なんて、気になっちゃうわ」

「全く、人をなんだと……。菜都さんだってそうでしょう? 高羽課長は今日はいらっしゃってるんですか?」
「あちらよ」

 指先まで綺麗なネイルで彩られた指が人混みの中を指差すと、その中で冷たいような美貌の男性が女性に囲まれていた。

「相変わらずですね」
「相変わらずね。仕方ないわよ。あのご面相じゃね」

「それを言うなら菜都さんもでしょう?」
「それはそうだけれど……ねえ? 婚約者の方は? ご紹介して下さらないの?」

 そう言って、菜都と呼ばれた女性は片倉の横に立っていた浅緋に笑いかける。

「婚約者の園村浅緋さんです」
「あら、園村ホールディングスのお嬢様かしら?」

 苗字を聞いて、すぐに浅緋の正体に気付く辺りがすごい。
「そうですね」

「ふうん。あなたが政略結婚をする、と噂になっていたけれど、今回はそれを肯定するために来たの? それとも否定するため?」
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