政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
「ご想像にお任せしますよ」
「食えない男ね。つまらないわ。ではお嬢様、ごきげんよう」

 つまらないと言いながらもなんだか、ご機嫌な様子で菜都と呼ばれた女性は去った。

 やはり政略結婚なのだと自分の知らないところでも噂になっていると聞いて、浅緋の顔からは血の気が引いた。

「浅緋さん、彼女の言うことは気にしないでください」
 その言葉に、浅緋は返事をすることができなかった。


 菜都との会話の後から、表情がすっかり沈んでしまった浅緋に、片倉はどうしていいのか分からなかった。

 先ほどまでは自然な明るい笑顔を見せてくれていたのだ。
 これでうまくいくかもしれないと考えた矢先に、菜都から政略結婚だのなんだのと聞かされて、そんなことが噂になっているのかと思ったら、浅緋が沈みこんでしまったのだ。

 やはり、政略だったのだと思い直したのかもしれない……。
 そんな風にも思えた。

「疲れましたか?」
「いえ……」

 けれど、そう答える浅緋の顔色はお世辞にもいいものとは言えなかった。
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