政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
──それは……もうダメだと。終わりなんだということなんだろうか……。

『実家に帰ります、婚約は破棄してください』

 そう静かに言う浅緋の姿を想像すると、片倉は目の前が暗くなる。

「大事なお話があるんです」

 前を向いて、背筋を伸ばしてキリリと言う浅緋は、やはり園村の娘なんだと片倉は思った。

 片倉は今までのことが強引だったことは、十分に理解している。それに加えて、昨日のことも輪をかけて強引だったと嫌われても無理からぬことなのだ。

「はい」
 片倉はうなだれて、そう返事することしか出来なかった。

 何を言われても、浅緋のしたいようにしよう、と片倉は思ったのだ。
 例え、それが婚約の破棄であったとしても。

 車を正面ではなく、お勝手の方に停めてもらうよう浅緋が渡辺に伝えている。
 車を降りた浅緋に片倉は声をかけた。

「浅緋さん、外はまだ寒い。コートをどうぞ」
 例え少しの距離であっても、浅緋に寒さを感じさせるなど、片倉はしたくなかった。

「慎也さんも、お召しになってくださいね」
「はい」
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