政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
「そ……うですか……」
 片倉は俯いた。

 自分の足先と整えられた芝が目に入る。大きな桜の木の根も。

「慎也さん」
 片倉の視界に浅緋の足先が入った。

 そんな声で呼ばないでほしい。
 そんな甘い声では。

 浅緋はぎゅっと握っている片倉の拳をそっと手に取った。

「そんな風にしないで? 痛めてしまいます」
「なぜ、そんな顔で見るんです?」

「そんな……?」
「まるで僕の事を思いやっているような顔ですよ」
「はい」

 こんな話をしているのに、浅緋はとても穏やかで優しい顔で片倉を見て、そしてそっと手を握ってくれているのだ。
 強く、片倉が握ってしまわないように。

「父の遺書の事は忘れてください」
──残酷です、浅緋さん。
浅緋が今、口にしていることが、どれほど片倉にショックを与えているか分かっていない。

「それで私お伝えしたいことがあります。慎也さん……お慕いしています……」

「お……慕い……?」

 聞き間違えか?
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