政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 浅緋を見ている片倉の瞳が、今度は期待感のようなものできらきらしている気がした。

「その意味を私に伝えようとしてくださっていて、そして、私とこうやって触れ合うことに心の準備ができるように少しずつ、慣らしてくださっているのかと……。それがプレゼントの意味なんだと思いました」

 キスすらも初めてだった浅緋から、キスできるように。
 触れ合うことはこういうことなんだと、片倉は言葉を使わずに浅緋に伝え続けていた。

 ゆっくり、浅緋のペースに合わせて。
 そして、浅緋がそれに気づくように。

 浅緋は繋がっている両手をきゅっと握って、片倉に笑いかける。

「慎也さん、私に甘いです……」
「甘くもなる」
 苦笑した片倉が、コツっと浅緋と額を重ねた。

「こんな可愛いことを言う婚約者に甘くならない訳がない。こんなに最速で最適解を出すとは思ってなかったよ。プレゼントはまだあったのにな」

「え? そうなんですか?」
「うん。これ以降のプレゼントは意味とか考えなくていいから純粋に楽しんでくれたらいいよ。気持ちは伝わっているようだ」
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