7日間花嫁を演じたら、冷徹富豪な石油王の極上愛に捕まりました

バッグや靴、それに下着や身の回りの物を永斗さんは全てを買いそろえてくれた。

そこまで高価な物は必要ないと拒んでも、「金を出すのは俺だ」と言って聞かなかった。

店を出ると、外にはインカムを付けた複数のSPが永斗さんを待ち構えている。

ここまで厳重な警備をしかれているのは弟の海さんとの確執のせいなんだろうか。

「いつもこうなんですか?」

「ああ。万が一の為には仕方ない。俺に消えてもらいたい人間がすぐ近くにいるからな」

永斗さんは淡々とそう言ってのけた。

すぐ近くの人間……。それって弟の海さんのことなんだろうか。

私の知らない世界で永斗さんは生きていると思い知らされる。

「――すみません、お待たせしました!」

両手に大きな紙袋をいくつも抱えてこちらへ駆け寄ってくるマリア。

ほとんどの荷物はスタッフが車まで運んでくれたものの、まだあんなにあったんだ……。

「マリア、ごめんなさい。荷物持たせちゃって。貸して?私が持つから」

「いえ、これを持つのが私の仕事ですので」

「でも一人じゃ重いから」

そう言ってマリアの手にある紙袋に手をかけると「おい」と腕を掴まれた。

「どうしてお前が持とうとする」

「一人で持つと重いと思って……」

「それならお前が一人で持っても同じことだろう。それに、これでは付き人の仕事を奪うことになるぞ」

「あ……」

そこまで考えが及んでいなかった。

「確かにそうですね……。それなら……半分こ、しよう」

私はマリアの手にある紙袋をいくつか手に取った。

「ありがとうございます、沙羅様」

そう言ってマリアは微笑む。

「これなら文句はありませんよね?」

「勝手にしろ」

永斗さんは呆れたように私から顔を背ける。

「ふふっ、永斗様と沙羅様はよく似ていますね」

「どこがだ」

「どこが?」

言葉が重なり合い思わず目を見合わせる。

「弱い人をほおっておけないところが。それにほら、やっぱりお二人は息がピッタリです」

そう言ってマリアはクスクスと笑った。
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